中畑清『諦めるな!』

 

諦めるな!  (角川oneテーマ21)

諦めるな! (角川oneテーマ21)

 

・古風な男キヨシ

・石川雄洋キャプテンに背負わすものは予想より重い

・山口&高崎コンビは……!?

 

今シーズン初の連勝(4連勝!)を決めた横浜DeNAベイスターズ中畑清監督の「野球人論」という感じでしょうか。現役時代は巨人で「絶好調男」と呼ばれ、明るいキャラクターは現在もそのまま継続中な中畑監督、意外というべきか、相当古風なんだなー!というのがよくわかりました。いわく「高校球児は五厘刈りであるべき」、「プロ野球選手も奇抜な髪型やヒゲはいかがなものか(信念があればOK:例:日ハム時代の小笠原道大選手の髭は◯、ベイスターズ三浦大輔投手のリーゼントも◎)」、「スポーツ紙の一面は芸能ニュースでなくスポーツ、それも野球が飾るべき」云々。奇抜な髪型やヒゲがNGというのはやはり“紳士たる”巨人軍出身だからでしょうか。

気になるベイスターズ監督就任後の話がもちろんメインにつき、直後から現在までの中心選手に対するコメントがちらほら書かれています。特にキャプテン・石川雄洋選手については何度も言及があり、彼に期待するところの大きさが感じられようというものです。正直、誰もが認めるリーダーシップがあるようにも見えず、圧倒的な成績を持つわけでもない石川選手に対する中畑監督の期待値ってどういうものなんだろうな?と思っていた部分があるのですが、この本とDVD『ダグアウトの向こう』を観ると、中畑監督がこの若い選手と心中したい気持ちが少し見える気がします。他の選手に関してはせいぜい1項(見開き2ページ程度)がいいところですが、石川選手に関しては第2章「人をつくる、ということ」の冒頭から3項費やして彼を育ててきた経過を記しています。この本の中で繰り返し語られる「俺には技術もなければ自信もない、しかもこのチームはもともとガタガタだった、だからとにかく人を育てるしかない」という彼の監督論の試金石であり、ひとつの成果なのでしょう。

「他の選手に関しては1項程度」と先述しましたが、個別のケースとして取り上げられているのは中村紀洋選手、荒波翔選手、梶谷隆幸選手、加賀美希昇投手です。「え、加賀美さん!?」と思ってしまってすみません。少し意外でした。ここで彼について書かれているのは「力はあるのにメンタルで弱いところがある、敗戦をきっかけに変わってほしい」という話。これはベイスターズの若手投手陣全般に期待されていることだと思うので、昨夏の大型連敗中に踏ん張れず試合を落とした彼をその代表格としてあげたのかな、と思う反面、それなら山口俊投手や高崎健太郎投手もそういう試合けっこうあったじゃん?と思い、ここで言及すらされない2人に対するキヨシの落胆を感じた次第です(他のページでも話に登場しないのです)。エース高崎・守護神山口の時代が来ると思われていた時期もあったのに……。

気になるDeNAベイスターズ内幕事情のようなことは当然ですがあまりありません。「就任直後は挨拶もろくにできなかった」「スタッフも暗かった」というような話くらいでしょうか。それから中畑監督といえば自称“長嶋茂雄の一番弟子”であり、長嶋さん愛で知られるところですが、さすがに今回はそこは本筋から外れるためか、あまり言及はありません。しかし忍ぶれど色に出でにけり……という感じで(ちょっと違う)、本題でないのに過剰な愛がにじみ出ているところが良かったです。2回も「神のような存在」と記述しているところとか、特に。しかも2回めは、

多くの人が感じているはずだが、長嶋さんの存在はもはや神に近い。あの人がちょっと笑っただけで、周りのみんなは元気になり、さわやかな気分になれる。(P137) 

 などとさりげなくすごいこと言ってます。霊験あらたか・招福万来・ご利益満載という感じですね。確かに、プロ野球界の現人神ではありましょう。

中畑監督は今年就任3年目、ラストイヤーになるのではないかといわれておりますゆえ、今年はいい成績を残して成功論の本を次は読みたいですね。